脳卒中患者さんへの上肢リハビリとしてコンセンサスが得られているものの中に、CI療法があります。
CI療法は、非麻痺側を使わず、麻痺側上肢を集中的に使うことで麻痺側上肢の運動機能や運動パフォーマンスを向上させようとするリハビリです。
脳卒中治療ガイドライン2021では日常生活動作障害や上肢機能障害に対して推奨されています。
また、2015年のコクランレビューでは麻痺側上肢の運動パフォーマンスや運動機能の向上に有効であることが報告されています。
CI療法は統一されたプロトコルがなく、研究によって色々な課題、色々な条件(時間・頻度・期間など)で行われています。
オリジナルのCI療法は1回当たり6時間程度のリハビリを行うものでしたが、近年では1時間程度のCI療法も研究され、有効性が報告されています。
急性期の脳卒中患者さんに対してはそもそも高強度のリハビリ自体が有効なのかどうかという議論がありますが、CI療法はどうなのでしょうか?
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急性期の脳卒中患者さんへのCI療法は低強度が望ましい
エビデンスに基づいて判断すると、急性期の脳卒中患者さんへのCI療法は低強度が望ましい、と言えます。
低強度のCI療法とは、1日あたり2時間以下で行われるCI療法を意味します。
根拠は①Nijland (2010)のシステマティックレビューで低強度のCI療法が従来のリハビリと比べて有効であるに対し、高強度の場合では有効であるとは言えないという報告がある、②2010年以降のランダム化比較試験でも低強度のCI療法で有効であると報告している、の2点です。
以下、それぞれを紹介します。
Nijland R (2011) のシステマティックレビュー
リサーチクエスチョン
急性期・亜急性期脳卒中患者に対するCI療法は、上肢の運動パフォーマンス・運動機能向上に有効か?
方法
取り込み基準
- ランダム化比較試験
- 上肢へのCIMTが行なわれている研究
- 18歳以上の脳卒中患者を対象にしている
- 急性期あるいは亜急性期の脳卒中患者を対象にしている
- 英語、ドイツ語、オランダ語で記載されている
検索の情報源
- PubMed
- EMBASE
- Cochrane Central Register of Controlled Trials
- CINAHL
- Physiotherapy Evidence Database (PEDro)
- WHO ICTRP trial register
- EBSCO/SportDiscusTM
最終検索日
2010年12月
結果
取り込まれた研究数
5件
メタアナリシスの結果
CI療法の1日当たりの時間が3時間以上のものを “高強度”、2時間以下のものを “低強度” として解析
Nijland (2011)のシステマティックレビューの結果、低強度のCI療法は運動機能や運動パフォーマンスに対して有効であるとされました。
一方、高強度のCI療法は有効であるとは言えない、という結果になっています。
2011年以降の研究で結果が変わっていないか? −4件のランダム化比較試験の結果から−
Nijland (2011)のシステマティックレビューは参考になるのですが、最終検索日が2010年12月と、現在までのラグがあります。
もしかしたら、2011年以降に出版された研究では相反する結果を報告しているかもしれません。
2011年以降、急性期の脳卒中患者さんに対するCI療法の効果を検証した、比較的バイアスリスクの低いランダム化比較試験は4件あります。
いずれも従来のリハビリテーションとCI療法の比較をしています。
4件中2件が高強度(1日あたり3時間)、2件が低強度のCI療法(1日あたり1時間)を行なった研究でした。
高強度のCI療法を行なった研究は2件中1件は急性期の脳卒中患者さんに対して有効だったという報告をしていますが、2件中1件は有効であるとは言えない、と報告しています(Thrane G, 2015; Stock R, 2018)。
一方、低強度のCI療法を行なった研究は、2件中2件で、急性期の脳卒中患者さんの上肢の運動パフォーマンスに対して有効だったと報告しています(Kwakkel G, 2016; Liu KP, 2016)。
すなわち、2010年以降の研究でも “低強度のCI療法が有効である” という結果になっています。
現状までのエビデンスで言えば、急性期は低強度のCI療法が有効であると考えて問題なさそうです。
日本では高強度のCI療法をやろうと思っても制度上難しいのですが、状態が安定していて運動が問題ない患者さんであれば低強度のCI療法も選択肢に挙げて良いでしょう。
まとめます。
● 脳卒中リハビリにおけるCI療法は世界的にコンセンサスが得られている
● 急性期(発症14日以内)の脳卒中患者さんに対しては低強度のCI療法が有効
● 2010年以降の研究でも同様の結果を示している
参考文献
Nijland R, Kwakkel G, Bakers J, van Wegen E. Constraint-induced movement therapy for the upper paretic limb in acute or sub-acute stroke: a systematic review. Int J Stroke. 2011 Oct;6(5):425-33.
Kwakkel G, Winters C, van Wegen EE, Nijland RH, van Kuijk AA, Visser-Meily A, de Groot J, de Vlugt E, Arendzen JH, Geurts AC, Meskers CG; EXPLICIT-Stroke Consortium. Effects of Unilateral Upper Limb Training in Two Distinct Prognostic Groups Early After Stroke: The EXPLICIT-Stroke Randomized Clinical Trial. Neurorehabil Neural Repair. 2016 Oct;30(9):804-16.
Thrane G, Askim T, Stock R, Indredavik B, Gjone R, Erichsen A, Anke A. Efficacy of Constraint-Induced Movement Therapy in Early Stroke Rehabilitation: A Randomized Controlled Multisite Trial. Neurorehabil Neural Repair. 2015 Jul;29(6):517-25.
Liu KP, Balderi K, Leung TL, Yue AS, Lam NC, Cheung JT, Fong SS, Sum CM, Bissett M, Rye R, Mok VC. A randomized controlled trial of self-regulated modified constraint-induced movement therapy in sub-acute stroke patients. Eur J Neurol. 2016 Aug;23(8):1351-60.
Stock R, Thrane G, Anke A, Gjone R, Askim T. Early versus late-applied constraint-induced movement therapy: A multisite, randomized controlled trial with a 12-month follow-up. Physiother Res Int. 2018 Jan;23(1).