電気刺激療法は、脳卒中患者さんへのリハビリでは広く行われます。

本来、セラピストが患者さんに対して実施するものではありますが、最近では高性能な電気刺激機器が市販されるようになってきており、脳卒中の患者さんが自分で購入し、自宅でのセルフエクササイズとして利用することができるようになってきています。

電気刺激療法はあらゆる場面で使われるようになってきていると言えるでしょう。

しかし、電気刺激療法は、ただ単にやればいいというものではありません。

正しい使い方を知らなければ、効果がないどころか体に害を与えてしまうことにもなりかねません。

今回は、電気刺激を実施する際に避けなければならない “禁忌” について紹介します。

脳卒中患者さんの電気刺激療法で注意すべき “禁忌”

電気刺激における禁忌とは、「電気刺激を実施すべきでない患者さんやその状態や部位」を指します。

つまり、禁忌に該当する状態の患者さんや、禁忌に該当する身体部位には原則的に電気刺激を実施してはいけません。

では禁忌をどのように把握すればいいのか、ですが、まずは電気刺激装置の取扱書を読むことです。

電気刺激装置には様々な種類がありますが、どの装置にも取扱説明書に “禁忌” の記載があります。

電気刺激装置によって禁忌の記載が異なりますので、使用する装置に合わせて把握しておくことが大事です。

ここでは、多くの電気刺激装置で記載されていることが多い禁忌について紹介します。

禁忌対象者

心臓ペースメーカーなど体内に医療機器を埋め込んでいる人
悪性腫瘍がある人、感染症がある人
皮膚知覚障害の人
幼児または意思表示ができない人

禁忌部位

心臓の上

感覚が損なわれている部位
頸動脈洞上
静脈や動脈の血栓症または血栓性静脈炎の領域の近く
体内に金属・プラスチックを埋め込んである部位
妊婦の腹部、腰部、骨盤部

電気刺激を行うことで痛みが出たり、皮膚炎が起きた事例も報告されています。

禁忌を忘れてしまい誤って患者さんに適応してしまうことがないよう、ポケットに収まるサイズに印刷し、名札カードに入れておくか、電気刺激装置のケースの中に入れておきましょう。

電気刺激の禁忌に該当してしまう場合は…

お伝えした通り、電気刺激には禁忌があります。

禁忌に該当する場合は電気刺激を行えませんので、その他のリハビリで対応することになります。

電気刺激と同様に世界的にコンセンサスが得られているリハビリとしては上肢であれば課題指向型訓練やCI療法、ミラーセラピーがあります。

また、下肢・歩行であれば歩行練習やバランス練習、ミラーセラピーなどがあります。

これらは電気刺激と同様に脳卒中治療ガイドラインで推奨されており、またコクランレビューを始め世界中で有効性が報告されているリハビリですので、電気刺激療法に並ぶ選択肢として押さえておきましょう。

電気刺激療法は脳卒中患者さんへの有効なリハビリ手段ですが、電気刺激以外の選択肢もしっかりと準備しておき、電気刺激を行えない患者さんに対しても有効なリハビリを提供できるようにしておく、ということです。

まとめます。

● 脳卒中リハビリでは電気刺激は有効だけど禁忌がある
● 禁忌は電気刺激装置の取扱書を読むべき
● 電気刺激が行えない場合は他のリハビリで対応できるよう準備を

本日は「脳卒中患者さんの電気刺激療法で注意すべき “禁忌”」についてお話しさせていただきました。

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それでは今日もリハビリ頑張っていきましょう!