脳卒中リハビリのひとつに、振動刺激療法(しんどうしげきりょうほう)があります。

振動刺激療法とは、振動を身体に与えることによって、リハビリ効果を期待する方法です。

振動刺激は徒手療法、つまりセラピストの手で行われるリハビリでは再現できない刺激を身体に与えます。

これが、脳卒中後の運動機能の改善に効果があると考えられており、近年、世界中で研究が進められています。

しかし、まだ

  • 「本当に振動刺激を行うことで運動障害がよくなるのか」
  • 「どのような刺激タイプを選べばよいのか」
  • 「刺激条件(周波数や刺激部位、刺激時間など)はどれが最善か」

など、不明な部分も多いリハビリ方法です。

今回紹介する研究は、振動刺激に関する研究論文をまとめ、こういった問いに対して一定の答えを示しています。

結果として、脳卒中後の上肢運動障害に対して、振動刺激は有効である、つまり、振動刺激を活用することによって運動障害の改善を後押しすることが明らかになりました。

今回は、2024年の研究論文をもとに、振動刺激の効果について解説します。

情報の信頼性について
・本記事はBRAIN代表/理学療法士の針谷が執筆しています(執筆者情報は記事最下部)。
・本記事の情報は、信頼性の高いシステマティックレビュー研究から得られたデータを引用しています。

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脳卒中後の上肢運動障害に対する振動刺激療法の効果3選

最初に結論です。振動刺激療法の効果は以下のとおりです。

  • 運動障害をよくする
  • 運動パフォーマンスをよくする
  • 日常生活動作の自立度を上げる

これらを踏まえると、脳卒中後の腕や手のリハビリにおいて、振動刺激は有効活用すべきであると言えます。

以下、詳しく解説します。

振動刺激療法とは?

振動刺激療法とは、振動刺激を身体に与えることによって、リハビリ効果を期待する方法です。

振動刺激には

  • 局所的振動刺激
  • 全身振動刺激

の2つのタイプがあります。

局所的振動刺激

ハンディマッサージャーを使って身体の一部に振動刺激を与えるタイプです。

ピンポイントで振動刺激を与えることが可能です。

全身振動刺激

特殊なマシンの上に立ち、マシンを震えさせることによって全身に振動を与えるタイプです。

全身に振動が与えられます。

振動刺激のやりかた

振動刺激は、以下の2ステップで行われます。

STEP1. 振動刺激を行う
STEP2. 動きのリハビリを行う

振動刺激は、基本的に身体を動かす他のリハビリと組み合わせられます。

例えば、振動刺激を与えた後に物品を操作するリハビリを行う、というイメージです。

物品を操作するリハビリの代表格である課題指向型訓練について、こちらの記事で紹介していますので、よかったら合わせてご覧ください。

実際、今回紹介する2024年のの研究でも、振動刺激だけでリハビリを行うよりも、身体を動かす他のリハビリを組み合わせた方が有効であることが報告されました。

振動刺激はあくまでもリハビリをサポートする補助的な方法であり、メインのリハビリもしっかり計画し、実行する必要があることを知っておいてください。

振動刺激の効果

それでは、この研究で明らかになった振動刺激の効果について解説します。

①上肢の運動障害をよくする

まず、上肢の運動障害に対して、局所的振動刺激が有効であることが報告されました。

運動障害とは、手をグーパーする動きや、指をバラバラに動かす動き、肘を伸ばしたまま腕を挙上する動きなどが障害されることを意味します。

つまり、振動刺激を行うことによって細かい運動を獲得できる可能性があるということが示されました。

② 上肢の運動パフォーマンスをよくする

また、上肢の運動パフォーマンスを向上させる上で、局所的振動刺激が有効であることが報告されました。

運動パフォーマンスというのは、目的を持った動作のことです。

例えば、私たちは日常生活の中で、スマートフォンを操作するために手を動かします。あるいは、料理をするために手を動かします。

このように、手を動かすのは何らかの目的を達成するためです。

もし運動障害がよくなって、細かい動きができるようになっても、その運動を組み合わせ、目的とする動作を行えなければ意味がありません。

この目的とする動作を行う能力が運動パフォーマンスです。

リハビリによっては、

  • 運動障害はよくなるものの運動パフォーマンスはよくなるとは言えない
  • 運動パフォーマンスはよくなるものの運動機能がよくなるとは言えない

といったものがあります。

局所的振動刺激は、運動障害も運動パフォーマンスもよくすることが明らかになりました。

つまり、麻痺手の細かい動きを再獲得するのにも役立ちますし、目的的な動作を再獲得するのにも役立つということです。

③ 日常生活動作の自立度を向上させる

最後に、日常生活動作の自立度を向上させるうえでも役立つということが報告されました。

リハビリテーションの主要な目的のひとつに「日常生活動作の自立」が挙げられます。

簡単に説明すると、ひとりで生活を送れるようになる、ということです。

振動刺激を行うことによって、腕や手の運動障害、運動パフォーマンスの向上にとどまらず、日常生活動作の自立度向上にも役立つことが明らかになりました。

ベストな刺激条件は?

この研究では、振動刺激のエビデンスを集め、最善の刺激条件についても検討されました。

しかし、各研究で行われた振動刺激の刺激条件(周波数や刺激部位、刺激時間など)は大幅に異なっており、統一されていませんでした。

このことから、最善の刺激条件については未解明のままとなってしまいました。

今後は、最善の刺激条件を見つけるためのさらなる研究が必要と考えられます。

まとめ

まとめます。脳卒中後の上肢運動障害に対し、振動刺激は

  • 運動障害をよくする
  • 運動パフォーマンスをよくする
  • 日常生活動作の自立度を上げる

といった効果があることが明らかになりました。また、

  • 全身振動刺激よりも局所的振動刺激の方が優れた効果を示す

ことも明らかになりました。

しかし、まだ

  • 刺激条件(周波数や刺激部位、刺激時間など)はどれが最善か

といった問いに答えるためのエビデンスがありません。

これに対しては、患者さんひとりひとりの年齢や重症度、病期(発症からの経過期間)に合わせて、似たような患者さんを対象にして結果が出た研究で行われた振動刺激の刺激条件を再現する、という工夫が必要になります。

つまり、セラピスト側に、エビデンスをひとつずつ読み解く能力が必要であるということです。

しかし、論文を読めるセラピストであれば誰でも再現可能ですので、振動刺激療法に興味がある方は、担当セラピストさんに相談してみてください。

また、今回は紹介していませんが、振動刺激には痙縮を低下させる効果があったり、プライミングとしての効果も報告されています。

腕や手のリハビリに振動刺激を有効活用してみてはいかがでしょうか。

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参考文献

Lu YH, Chen HJ, Liao CD, Chen PJ, Wang XM, Yu CH, Chen PY, Lin CH. Upper extremity function and disability recovery with vibration therapy after stroke: a systematic review and meta-analysis of RCTs. J Neuroeng Rehabil. 2024 Dec 21;21(1):221. doi: 10.1186/s12984-024-01515-6. PMID: 39707380; PMCID: PMC11662454.