
アテローム血栓性脳梗塞は、首や脳の太い血管に動脈硬化(コレステロールの塊=アテローム)が溜まり、その部位で血の塊(血栓)ができて脳の血流が途絶える病気です。
脳梗塞の3つのタイプ(アテローム血栓性・心原性・ラクナ)の中で、再発率が最も高いタイプとして知られています。
この記事では、アテローム血栓性脳梗塞の原因・症状・診断・急性期治療・再発予防・後遺症とリハビリ・予後まで、当事者とご家族が知っておきたい情報を1つにまとめて解説します。
脳卒中専門リハビリ施設BRAINの代表で理学療法士の針谷が、臨床経験と研究論文に基づいて解説します。
・病型分類は脳梗塞の国際的な分類基準(TOAST分類)を基にしています。
・治療・予防効果の数値は、信頼性の高い研究論文から引用しています(参考文献に明記)。
・実際の診断・治療方針は、必ず主治医にご確認ください。
1つでも当てはまれば、すぐに救急車を呼んでください(Time is brain)。
アテローム血栓性脳梗塞は、発症前に「一過性脳虚血発作(TIA)」という前ぶれが出やすいタイプです。数分~数時間で消えても放置せず、必ず受診してください。
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アテローム血栓性脳梗塞とは|3つの脳梗塞タイプの中での位置づけ
脳梗塞は、原因によって大きく3つのタイプに分けられます。
この分類は1993年に発表された国際的な研究で示された「TOAST分類」が世界中で使われています(Adams, 1993)。
首や脳の太い血管(頸動脈・脳底動脈など)の動脈硬化が原因。脳梗塞全体の約30%を占める。
② 心原性脳塞栓症
心房細動などで心臓にできた血栓が脳に飛ぶ。重症化しやすい。
③ ラクナ梗塞
脳の深部の細い血管が詰まる小さな梗塞。高血圧が主因。
アテローム血栓性脳梗塞は、動脈硬化が長年かけて進行した結果として起こるのが特徴です。
高血圧・糖尿病・脂質異常症・喫煙といった生活習慣病が背景にあることがほとんどです。
そのため、再発を防ぐには元の病気(動脈硬化)を治療し続ける必要があります。
原因|大きな血管の動脈硬化
アテローム血栓性脳梗塞は、首から脳までを走る太い血管の動脈硬化が原因で起こります。
動脈硬化は次の3ステップで進行します。
- 血管の内壁にコレステロールが溜まり、「アテローム(粥状の塊)」を作る
- アテロームが破れて血液と接触し、その部位で血の塊(血栓)ができる
- 血栓が血管を完全に詰まらせるか、剥がれて先の細い血管を塞ぐ
動脈硬化を進める最大の危険因子は、高血圧・糖尿病・脂質異常症・喫煙の4つです。
これら4大危険因子は、いずれも自覚症状なく進行するため「サイレントキラー」と呼ばれます。
「血圧の薬は一度始めたら一生もの」と感じて自己中断する方が多いのですが、動脈硬化は止まらず進行を続けます。
再発予防の第一歩は「薬を飲み続けること」であることを、ご本人とご家族でぜひ共有してください。
症状|階段状進行と症状の特徴
アテローム血栓性脳梗塞の症状は、段階的に悪化していく「階段状進行」がよくみられます。
これは、血栓が少しずつ大きくなる、あるいは時間をかけて血流が低下していくためです。
・ろれつが回らない、言葉が出ない(構音障害・失語症)
・片方の目が見えにくい、または視野の半分が欠ける
・めまい、ふらつき、まっすぐ歩けない
・突然の激しい頭痛(まれ)
・意識がぼんやりする、呼びかけに反応が鈍い
発症の時間帯は「寝起き」「早朝」に多いのが特徴です。
これは、夜間の脱水や血圧低下で血流が遅くなり、血栓ができやすくなるためです。
また、発症前に「一過性脳虚血発作(TIA)」という前ぶれが出ることが多いタイプでもあります。
TIAは数分~数時間で症状が消えますが、本格的な脳梗塞の「予告」と捉えて、必ず救急受診してください。
診断と画像所見
アテローム血栓性脳梗塞の診断には、複数の検査を組み合わせて行います。
① 頭部MRI(拡散強調画像)
発症数時間以内でも梗塞を白く描き出せるのが拡散強調画像(DWI)の強みです。
アテローム血栓性脳梗塞では、1つの太い血管の流域に沿って比較的大きな梗塞が見えることが多いです。
② 頸動脈エコー・MRA・脳血管造影
首や脳の太い血管に動脈硬化(狭窄)があるかを確認するための検査です。
頸動脈に50%以上の狭窄、または脳内の太い血管(中大脳動脈・脳底動脈など)に狭窄があれば、アテローム血栓性脳梗塞の可能性が高くなります。
③ 心電図・心エコー
心房細動による心原性脳塞栓症と区別するため、心臓の検査も行います。
④ 血液検査
コレステロール(LDL・HDL)、HbA1c(糖尿病の指標)、凝固機能などを調べ、動脈硬化の原因となる持病をチェックします。
急性期治療(tPA・血栓回収)
発症後できるだけ早く治療を始めることで、後遺症を軽減できます。
① tPA静注療法(血栓溶解療法)
tPA(組織プラスミノーゲン活性化因子)という薬を点滴で投与し、血栓を溶かします。
1995年に発表された研究では、発症3時間以内にtPA治療を受けた方は、受けなかった方に比べて3か月後に後遺症なく日常生活に戻れる割合が高いことが報告されています(NINDS, 1995)。
日本では現在、発症から4.5時間以内であればtPA治療の対象となります。
② 血栓回収療法(機械的血栓除去)
カテーテルを脳の血管に入れて、詰まった血栓を直接取り除く治療です。
2015年に発表された研究では、脳の太い血管が詰まった脳梗塞に対し、血栓回収療法を行った群はtPAだけの群に比べて、3か月後に自立して生活できる方の割合が約2倍に増えたことが示されました(Berkhemer, 2015)。
同じ2015年に発表された別の研究でも、発症12時間以内であれば血栓回収療法で後遺症を大きく減らせることが報告されています(Goyal, 2015)。
現在、日本では発症から原則8時間以内(条件により最大24時間まで)が血栓回収療法の対象です。
発症後1分ごとに約190万個の神経細胞が失われると言われており、治療開始が遅れるほど後遺症が重くなります。
「少し様子を見よう」は最大の禁句です。顔のゆがみ・腕の脱力・ろれつが回らないのいずれか1つでもあれば、迷わず119番してください。
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なぜ再発リスクが高いのか
アテローム血栓性脳梗塞は、3つの脳梗塞タイプの中で再発率が最も高いとされています。
その理由は次の3点です。
理由① 動脈硬化は全身に広がっている
1か所の血管に動脈硬化があるということは、他の血管にも同じ変化が進んでいることを意味します。
そのため、別の血管が次に詰まる可能性があります。
理由② 危険因子が複数重なっている
高血圧・糖尿病・脂質異常症・喫煙のうち、2つ以上を併せ持つ方が大半です。
これらをコントロールし続けないと、動脈硬化はさらに進みます。
理由③ 心筋梗塞のリスクも併発する
同じ動脈硬化が心臓の血管に起これば、心筋梗塞になります。
アテローム血栓性脳梗塞の方は、脳梗塞の再発だけでなく心筋梗塞の発症リスクも同時に高いことが知られています。
再発予防|抗血小板薬・スタチン・生活習慣
アテローム血栓性脳梗塞の再発予防は、「薬」「数値管理」「生活習慣」の3本柱で行います。
① 抗血小板薬(血をサラサラにする薬)
アスピリン・クロピドグレル・シロスタゾールなどの薬で、血栓ができにくくします。
2018年に発表された研究では、発症直後の脳梗塞・TIA患者にアスピリン+クロピドグレルの2剤併用を行うと、3か月以内の再発リスクがアスピリン単剤よりも有意に低下しました(Johnston, 2018)。
ただし、長期併用は出血リスクを高めるため、2剤併用は発症後3週間程度までが一般的です。
② スタチン(コレステロールを下げる薬)
LDLコレステロールを下げることで、動脈硬化の進行を抑え、アテロームを安定化させます。
2006年に発表された研究では、脳梗塞・TIA後の方に高用量スタチン(アトルバスタチン80mg)を投与すると、5年間の脳卒中再発率が16%減少しました(Amarenco, 2006)。
LDLコレステロールは70mg/dL未満を目標にコントロールするのが一般的です。
③ 血圧管理
2008年に発表された研究では、脳梗塞後の方を対象に血圧を下げる薬(テルミサルタン)を投与した群と偽薬の群を比較し、2.5年間の脳卒中再発率に差はなかったものの、心血管イベントの発症は減少傾向が見られました(Yusuf, 2008)。
日本の脳卒中ガイドラインでは、130/80mmHg未満を再発予防の目標値としています。
④ 糖尿病管理
HbA1cを7.0%未満に保つことで、動脈硬化の進行を遅らせられます。
⑤ 禁煙・節酒
喫煙は動脈硬化を加速させる最大のリスクの1つです。
禁煙すれば数年で脳梗塞リスクが非喫煙者と同程度まで低下することがわかっています。
⑥ 食事・運動
減塩(1日6g未満)、野菜・魚中心の食事、週150分以上の有酸素運動が推奨されます。
食事・運動・薬による再発予防の詳細は、脳卒中の再発予防|食事・運動・薬で何ができるかでも詳しく解説しています。
⑦ 頸動脈狭窄が強い場合は手術も検討
頸動脈に70%以上の高度狭窄がある場合、頸動脈内膜剥離術(CEA)または頸動脈ステント留置術(CAS)で詰まりかけの血管を物理的に広げる治療が選択されることがあります。
後遺症とリハビリ
アテローム血栓性脳梗塞の後遺症は、梗塞の場所と大きさによって変わります。
太い血管が詰まると広範囲の脳がダメージを受けるため、運動麻痺や失語症などの後遺症が残りやすい傾向があります。
・失語症(言葉が出ない・理解できない)
・構音障害(ろれつが回らない)
・高次脳機能障害(注意・記憶・遂行機能の低下)
・嚥下障害(飲み込みづらさ)
・半側空間無視(片側を認識しづらい)
・視野障害(半盲)
リハビリの3つのフェーズ
- 急性期リハビリ(発症~2週間):ベッドサイドで早期離床・座位訓練。
- 回復期リハビリ(2週間~6か月):回復期リハビリ病院で集中的に歩行訓練・上肢訓練・日常生活動作訓練。
- 生活期リハビリ(6か月以降):自宅・通所・外来でリハビリを続け、機能の維持と再発予防運動を行う。
歩行が「ぶん回し」になる方も多く、改善方法はぶん回し歩行の原因と改善で詳しく解説しています。
退院後の生活全般の整え方は、退院後の脳卒中リハビリ完全ガイドもあわせてご覧ください。
予後
予後(その後の経過)は、発症時の重症度と治療開始の早さで大きく変わります。
急性期治療(tPA・血栓回収療法)を早期に受けられた方は、後遺症を最小限に抑えられる可能性があります。
一方、アテローム血栓性脳梗塞は再発予防の継続が予後を大きく左右するのが特徴です。
・治療開始までの時間(特にtPA・血栓回収)
・回復期リハビリの質と期間
・退院後の再発予防(服薬継続・生活習慣・通院)
・併存疾患(糖尿病・心疾患・腎機能など)
BRAINからの臨床コメント
脳卒中専門リハビリ施設BRAINでは、アテローム血栓性脳梗塞の方を多く担当してきました。
臨床現場でお伝えしているポイントは3つあります。
抗血小板薬・スタチン・降圧薬は、血の塊を防ぐ・コレステロールを下げる・血圧を下げる「ブレーキ」です。止めればすぐに動脈硬化が再進行します。
② 数値は「悪くない」ではなく「目標値まで」
血圧130/80未満、LDL 70未満、HbA1c 7.0未満が目標です。「健康診断で正常」と言われた値は、再発予防には不十分なことが多いです。
③ リハビリは「機能改善」と「再発予防」の両輪
歩行・上肢のリハビリだけでなく、有酸素運動の習慣化が再発予防に直結します。
よくある質問(FAQ)
Q1. アテローム血栓性脳梗塞とラクナ梗塞の違いは何ですか?
詰まる血管の太さが違います。
アテローム血栓性は太い血管(頸動脈・中大脳動脈など)、ラクナ梗塞は脳深部の細い血管が詰まります。
アテローム血栓性のほうが梗塞範囲が広く、後遺症と再発リスクがより高い傾向にあります。
Q2. 再発率はどのくらいですか?
研究やデータベースによりばらつきがありますが、アテローム血栓性は3つのタイプの中で再発率が最も高いとされています。
適切な再発予防(抗血小板薬・スタチン・血圧管理・禁煙・運動)を続けることで、再発リスクを大きく下げられます。
Q3. 抗血小板薬は一生飲み続けるのですか?
原則として、再発予防のために継続が必要です。
出血リスクや他の合併症で中止を検討する場合もありますが、必ず主治医と相談のうえで判断してください。
自己判断での中断は、再発リスクを大きく高めます。
Q4. 頸動脈の手術(CEA・CAS)はどんな人が受けますか?
頸動脈に70%以上の高度狭窄があり、その血管が原因で脳梗塞やTIAを起こしたと考えられる方が対象です。
無症状でも狭窄が強い場合に予防的に行うこともあります。
適応は専門医(脳神経外科・血管内治療医)が判断します。
Q5. 食事で特に気をつけることは?
減塩(1日6g未満)、野菜・魚中心、揚げ物や加工肉を控える、お菓子・ジュースを減らすのが基本です。
地中海食(魚・オリーブオイル・野菜・全粒穀物)が脳卒中再発予防に有効とする研究が複数報告されています。
水分不足も血栓ができやすい要因なので、こまめな水分補給も大切です。
まとめ
- アテローム血栓性脳梗塞は、首や脳の太い血管の動脈硬化が原因で起こる脳梗塞で、全体の約30%を占めます。
- 段階的に悪化する「階段状進行」と、早朝の発症、TIA(前ぶれ発作)が特徴です。
- 急性期治療は、発症4.5時間以内のtPA静注療法と、原則8時間以内(条件により最大24時間)の血栓回収療法が標準です。
- 3つの脳梗塞タイプの中で再発率が最も高く、再発予防には抗血小板薬・スタチン・血圧管理・禁煙・運動が不可欠です。
- 頸動脈に70%以上の高度狭窄がある場合は、頸動脈内膜剥離術(CEA)やステント留置術(CAS)が選択肢になります。
- 後遺症は片麻痺・失語症・高次脳機能障害など多岐にわたり、急性期・回復期・生活期の各フェーズでリハビリを継続することが重要です。
- 「症状が落ち着いたから薬を止める」は最大のNG。数値目標(血圧130/80未満、LDL 70未満、HbA1c 7.0未満)まで管理を続けることが、再発予防の鍵です。
実際の診断・治療方針・服薬の変更は、必ず主治医にご確認ください。
本記事は医学的助言を代替するものではありません。
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参考文献
- Adams HP Jr, Bendixen BH, Kappelle LJ, et al. Classification of subtype of acute ischemic stroke. Definitions for use in a multicenter clinical trial. TOAST. Trial of Org 10172 in Acute Stroke Treatment. Stroke. 1993;24(1):35-41. PMID: 7678184
- The National Institute of Neurological Disorders and Stroke rt-PA Stroke Study Group. Tissue plasminogen activator for acute ischemic stroke. N Engl J Med. 1995;333(24):1581-7. PMID: 7477192
- Berkhemer OA, Fransen PSS, Beumer D, et al. A randomized trial of intraarterial treatment for acute ischemic stroke. N Engl J Med. 2015;372(1):11-20. PMID: 25517348
- Goyal M, Demchuk AM, Menon BK, et al. Randomized assessment of rapid endovascular treatment of ischemic stroke. N Engl J Med. 2015;372(11):1019-30. PMID: 25671798
- Amarenco P, Bogousslavsky J, Callahan A 3rd, et al. High-dose atorvastatin after stroke or transient ischemic attack. N Engl J Med. 2006;355(6):549-59. PMID: 16899775
- Johnston SC, Easton JD, Farrant M, et al. Clopidogrel and aspirin in acute ischemic stroke and high-risk TIA. N Engl J Med. 2018;379(3):215-25. PMID: 29766750
- Yusuf S, Diener HC, Sacco RL, et al. Telmisartan to prevent recurrent stroke and cardiovascular events. N Engl J Med. 2008;359(12):1225-37. PMID: 18753639
最終医療レビュー日:2026年5月15日

