【予後予測】脳卒中発症6ヶ月までに多くの患者さんが歩けるようになる!

脳梗塞や脳出血を発症すると、歩行障害(ほこうしょうがい)が生じます。

歩行障害のひとつに『ひとりで歩けない』という問題があります。

脳梗塞や脳出血を発症した後、後遺症が軽度で、すぐご自宅に退院される患者さんもいらっしゃいます。

一方、後遺症の程度によっては、回復期リハビリ病院へ転院され集中的なリハビリを受ける方もいらっしゃいます。

回復期でリハビリに取り組まれている方にとっては、『今後ひとりで歩けるようになるのだろうか』という心配があるのではないでしょうか。

本記事では、脳梗塞や脳出血を発症された患者さんが一般的に歩行が自立する可能性がどれくらいあるのか解説します。

介助量と歩行自立度
介助量と歩行自立度

情報の信頼性について
・本記事はBRAIN運営責任者/理学療法士/認定理学療法士(脳卒中)の針谷が執筆しています(筆者情報は記事最下部)。
・脳卒中リハビリに関する情報は、国内・海外の研究論文をもとに記載しています。参考文献のリストは記事の最後にありますので、事実の確認をしたい場合はそちらをご参照ください。

BRAINの自費リハビリ

脳卒中専門だからこそ提供できる質の高いリハビリサービスをご自宅で!

体験リハビリプログラム実施中!
詳細はこちら

脳梗塞で歩けないのは6ヶ月まで!?【2021年までの研究データを紹介】

最初に本記事のまとめです。

  • 一般的には74〜87%の患者さんが発症6ヶ月以内にひとりで歩けるようになる
  • ただし、発症1ヶ月で重度な歩行障害がある場合は可能性が下がる
  • もし6ヶ月で歩行自立できなくても、リハビリを継続することで歩行の自立度は上がる!

脳梗塞や脳出血(以下、脳卒中とします)を発症した患者さんのほとんどが6ヶ月以内に歩けるようになることが報告されています。

以下、説明します。

歩行の自立度を分類する “FAC” という評価指標

一般的に、ひとりで歩けない状況を『歩行自立度が低い』、ひとりで歩ける状況を『歩行自立度が高い』と言います。

厳密にいうと、歩行の自立度にも程度があります。

世界的に歩行の自立度を判定するときに使われるFunctional Ambulation Categories(以下、FAC)という指標を紹介します。

本記事ではいくつかの研究を紹介しますが、いずれの研究も、FACを使って歩行の自立度を判定しています。

FACのイメージを最初につかんでいただくとこの先の内容を理解しやすくなると思いますので、よかったら読んでください。

FACは歩行の自立度を6段階でみる指標

FACは0・1・2・3・4・5の6段階で歩行の自立度を判定するものです。

FACのイメージ
FACのイメージ

例えば、リハビリをすることでセラピスト1人の手伝いが必要な状況から手伝いなし・見守りで歩けるようになった場合はFAC2レベルから3レベルになった、と判定します。

あるいは、セラピストの見守りが必要な状況から不整地を歩けるようになるくらいまで改善した場合は、FAC3レベルから5レベルになった、と判定します。

病院の中で『院内歩行フリー(病院内なら看護師やセラピストの付き添いなく歩いて移動して良いこと)』『屋外歩行フリー(病院の外も看護師やセラピストの付き添いなく歩いて移動して良いこと)』というのは、4・5レベルに到達していることを意味します。

3レベルと4レベルが歩行自立の分かれ目

FACで大事なのは3レベルと4レベルの間です。

0・1・2・3レベルはセラピストなど介助者がいないと歩けない状態です。

一方、4・5レベルは歩ける環境に差はあれど、患者さんひとりで歩ける状態です。

ですので、4レベル以上が『歩行自立』と判定されます。

歩行の自立に関する研究では、多くの研究がFAC4レベル以上を『歩行自立』としています。

86.7%の人が6ヶ月以内に歩行自立したことを報告したLee(2017)の研究

Lee(2017)は、脳卒中患者さんの歩行の自立度について、発症6ヶ月までのデータを収集しました。

研究の結果、およそ86.7%の人が発症6ヶ月以内にひとりで歩けるようになることを報告しています。

脳卒中患者30人のデータを収集

この研究の対象者は、脳梗塞もしくは脳出血を発症した30人の患者さんでした。

平均年齢は55.0 (13.7)歳、右片麻痺の患者さんが15人、左片麻痺の患者さんが15人で、左右差は偏っていません。

脳卒中発症から平均13.0 (6.6) 日でリハビリが開始されており、リハビリ開始時は、全員ひとりでは歩けない状態でした。

対象者の方々は、発症から6ヶ月まで理学療法と作業療法、言語聴覚療法を1日1〜2時間、週5回受けました。

結果は以下のようになりました。

発症から1ヶ月で歩行が自立している人は33.4%

発症から1ヶ月で歩行が自立した人の割合

FAC4レベルに到達していた人は16.7%でした。

また、FAC5レベルに到達していた人は16.7%でした。

合計33.4%の人が歩行自立していました。

発症から3ヶ月で歩行が自立している人は70%

発症から3ヶ月で歩行が自立した人の割合

FAC4レベルに到達していた人は20%でした。

また、FAC5レベルに到達していた人は50%でした。

合計70%の人が歩行自立していました。

発症から6ヶ月で歩行が自立している人は86.7%

発症から6ヶ月で歩行が自立した人の割合

FAC4レベルに到達していた人は20%でした。

また、FAC5レベルに到達していた人は66.7%でした。

合計86.7%の人が歩行自立していました。

ほとんどの人が歩行自立する!

日本では、脳卒中発症直後の1ヶ月〜1.5ヶ月は急性期病院に、1.5ヶ月〜6ヶ月までは回復期リハビリ病院に入院し、集中的なリハビリを受けるケースが多いです。

注意
回復期リハビリ病院の入院日数は近年減少してきており、場合によっては2〜3ヶ月しか入院できないケースもあります。

ですので、回復期リハビリ病院を退院する頃にはほとんどの人が一人で歩けていることを意味します。

歩行自立といっても杖・装具が必要かも

注意点としては、本研究における歩行自立とは、杖や装具を装着している状態での歩行自立も含んでいるので、杖や装具が外れるかどうかまではわかりません。

人によっては杖・装具なしで歩行自立できる人もいますが、杖・装具がないとひとりで歩けない、という人もいます。

本研究のデータは毎日リハビリを受けた人のデータである

また、本研究の対象者の方々は、何もしないでよくなったわけではありません。

上述のように、1日1〜2時間、週5回はリハビリを受けています。

リハビリを受けなかった場合、歩行自立の可能性は下がります。

日本の回復期リハビリ病院では1日2〜3時間、週6〜7日はリハビリを受けられることが多いので、入院リハビリを受けていれば基本的には問題ありません。

Aaslund MK(2016)の研究では74%の人が6ヶ月以内に歩行自立したことを報告

Aaslund MK(2016)も、Lee(2017)同様、脳卒中患者さんが6ヶ月以内にどれくらいの人が歩行を自立できるのか調査しています。

結果としては、74%の患者さんが6ヶ月以内に歩行自立したことを報告しました。

なお、『歩行自立』の定義はLee(2017)と同様、FACで4〜5レベルです。

Lee(2017)の研究と僅かに異なり、Aaslund MK(2016)のデータは発症から平均5日でひとりで歩行ができなかった人たちを対象にしています。

多くの人が歩行補助具を使用せずに歩けるようになった

Aaslund MK(2016)の研究では、興味深いことに歩行補助具の使用状況も調査しています。

歩行補助具というのは、杖や装具、車椅子など、歩く動作を手伝ってくれる福祉用具のことを指します。

脳卒中発症5日で歩けなかった人たちは84%が車椅子を使用していました。

しかし発症6ヶ月時点で歩行補助具を何も使用していなかった人たちは65%だったと報告しています。

車椅子から6ヶ月でフリーハンドへ
車椅子から6ヶ月でフリーハンドへ

このことから、発症直後に車椅子が必要だった人たちも、6ヶ月後はひとりで、歩行補助具なしで歩けるようになっていることがわかります。

ただ、全員が歩行補助具を使わなかったわけではなく、13%の人が発症6ヶ月で杖が必要だったこと、また19%の人が車椅子が必要だったことを報告しています。

Gianella MG(2019)の研究ではおよそ4ヶ月で11%しか歩行自立した人がいなかったことを報告

一方で、重度の歩行障害がある患者さんの場合はやや難しい状況になります。

Gianella MG(2019)は、重度の歩行障害を持つ患者さんを中心に、およそ発症4ヶ月後までの歩行自立度の変化を報告しました。

この研究では、およそ4ヶ月後に歩行自立していた人の割合は11%でした。

重度の歩行障害を持つ185名を対象にしたGianella MG(2019)の研究

Gianella MG(2019)の研究では、発症から平均1ヶ月でまだ歩行自立していない、それもセラピストによる身体的な接触が必要なレベル(つまりFAC0〜2レベル)の患者さんのみを対象にしています。

ちなみに、対象者のうちFAC 0レベル(歩行困難で、歩くならセラピスト2人の介助が必要)の人が81%と大半を占めています。

つまり、Leeら(2017)やAaslund MK(2016)の研究と比べて、より重度の歩行障害を持つ人を対象にしていると言えます。

Gianella MG(2019)のデータは、『一般的な脳卒中患者さんの歩行の予後』ではなく『重度の歩行障害がある一部の人の歩行の予後』として捉えるのが適切かと思います。

なお、本研究の対象者は1日あたり50分のリハビリを2回(つまり1日100分)、週5〜6回受けました。

発症からおよそ4ヶ月後に歩行自立していたのは11%

Lee(2017)やAaslund MK(2016)の研究は発症から6ヶ月時点の歩行自立度を報告しましたが、Gianella MG(2019)の研究では、患者さんの退院時の歩行自立度を報告しています。

退院のタイミングは対象者によって異なりますが、平均すると発症から 119 (84-174) 日、つまり4ヶ月程度だったと報告されています。

そして4ヶ月時点での歩行自立度については、FAC4・5(歩行自立)の人は11%にとどまったとのことでした。

Gianella MG(2019)の研究結果

4ヶ月後に一番割合が大きかったのはFAC3レベル(歩行見守り)の人たちで、39.5%でした。

このことから、脳梗塞や脳出血を発症してからおよそ1ヶ月時点で歩行が自立できていない場合は、厳しい状況になることが予想されます。

注意
ここまで脳梗塞や脳出血を発症された患者さんの一般的な歩行の予後についてお伝えしましたが、このデータが誰にでも当てはまるわけではありません。あくまでも一般論としてご理解ください。

発症6ヶ月以降、歩行はよくならないのか?

Lee(2017)やAaslund MK(2016)の研究より、発症6ヶ月までに74〜86.7%の人が歩行自立するとお伝えしましたが、逆に言うと13.3〜26%の人は歩行が自立しない可能性があります。

さて、発症6ヶ月以降は歩行自立の可能性があるのでしょうか?

ご安心ください。

発症6ヶ月以降も歩行の自立度が向上するという研究データはたくさんあります。

Lee(2017)やAaslund MK(2016)のデータは6ヶ月までしかデータを取っていないので、6ヶ月以降のデータが彼らの研究からは報告されていないだけです。

トレッドミルトレーニングで歩行の自立度が向上

歩行練習の例

Srivastava A (2016)は発症から平均1年以上経過している脳卒中患者さんに対し、トレッドミルトレーニングを行うことで歩行自立度が向上したことを報告しました。

トレッドミルトレーニングは、トレッドミルマシンというウォーキングマシンの上を歩くリハビリです。

なお、リハビリは1回あたり30分、週5回、4週間実施されています。

つまり、発症から6ヶ月経過してしまっても、週5回、4週間のリハビリ(トレッドミルトレーニング)を受けることができれば、歩行が自立する可能性があります。

電気刺激+サイクリングで歩行の自立度が向上

電気刺激の例

Shariat A (2021) は、発症6ヶ月以降の脳卒中患者さんに対し、電気刺激とサイクリングを組み合わせたリハビリを行うことで歩行自立度が向上したことを報告しました。

なお、リハビリは1回あたり20〜30分、週3回、4週間行われています。

慢性期でも週3回以上のリハビリ(電気刺激+サイクリング)を1ヶ月受けることができれば、歩行自立度の向上が期待できます。

このように、発症から6ヶ月以降もリハビリを受けることによって歩行の自立度が向上することが報告されています。

ただし、慢性期で効果を期待するためには週3〜5回のリハビリを受けることが必要になるケースが多いです。

これは歩行の自立度の向上に限らず、腕や手、足の運動機能や、痙縮などその他の症状に対して同様のことが言えます。

外来リハビリや訪問看護リハビリではリハビリ量が足りないケースが多いため、自費リハビリを併用することを検討してみてください。

病院側からは予後について伝えられないことも多い

患者さんとしては、『これからどうなるのか知りたい』という気持ちが強いのではないかと思います。

担当医師やセラピストにご自身の予後について尋ねられたこともあるのではないでしょうか。

でも、詳しくは教えてもらえなかったという方も多いと思います。

病院側は、意地悪で伝えないわけではなく、患者様の予後を伝えることについてはとてもセンシティブに感じており、なかなか伝えるのが難しいという背景があります。

患者様ひとりひとりによって予後は異なります。

ただ、あくまでも『一般的なデータ』として、こういった研究のデータを知っておくというのは大事だと思います。

基本的には歩行自立される方が多いですし、6ヶ月で歩行が自立できなかったとしても、リハビリを継続することで歩行が自立する可能性はあります。

信頼できる医師やセラピストと一緒に、リハビリを進めてください!

BRAINの自費リハビリ

脳卒中専門だからこそ提供できる質の高いリハビリサービスをご自宅で!

体験リハビリプログラム実施中!
詳細はこちら

参考文献

Lee KB, Kim JS, Hong BY, Sul B, Song S, Sung WJ, Hwang BY, Lim SH. Brain lesions affecting gait recovery in stroke patients. Brain Behav. 2017 Oct 25;7(11):e00868.

Aaslund MK, Moe-Nilssen R, Gjelsvik BB, Bogen B, Næss H, Hofstad H, Skouen JS. A longitudinal study investigating how stroke severity, disability, and physical function the first week post-stroke are associated with walking speed six months post-stroke. Physiother Theory Pract. 2017 Dec;33(12):932-942.

Gianella MG, Gath CF, Bonamico L, Olmos LE, Russo MJ. Prediction of Gait without Physical Assistance after Inpatient Rehabilitation in Severe Subacute Stroke Subjects. J Stroke Cerebrovasc Dis. 2019 Nov;28(11):104367.

Srivastava, Abhishek, et al. “Bodyweight-supported treadmill training for retraining gait among chronic stroke survivors: A randomized controlled study.” Annals of physical and rehabilitation medicine 59.4 (2016): 235-241.

Shariat A, Nakhostin Ansari N, Honarpishe R, Moradi V, Hakakzadeh A, Cleland JA, Kordi R. Effect of cycling and functional electrical stimulation with linear and interval patterns of timing on gait parameters in patients after stroke: a randomized clinical trial. Disabil Rehabil. 2021 Jun;43(13):1890-1896.