
脳卒中の内反足は、麻痺がある側の足首が内側に倒れて、つま先が下がる状態で、慢性期の脳卒中の方の最大18%にみられると報告されています(Li, 2020)。
歩くときに足の小指側ばかり擦れる、つま先が床に引っかかる、装具をつけても歩きにくさが残る――。
そんな脳卒中の内反足は「治らない後遺症」と思われがちですが、原因に合った対処で歩きにくさは改善できます。
この記事では、内反足がなぜ起こるのか、どのような対処やリハビリが研究で効果を確認されているのかを、脳卒中専門リハビリ施設BRAINの代表で理学療法士の針谷が、臨床経験と研究論文に基づいて解説します。
・本記事の情報は、信頼性の高い研究論文から得られたデータを中心に引用しています。
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・顔のゆがみ(片側が下がる)
・片腕の脱力(腕が上がらない)
・言葉のもつれ(ろれつが回らない)
また、内反足の症状に加えて以下がある場合は、早めにかかりつけ医にご相談ください。
・歩いていて何度も転倒する
・足の裏や小指側に強い痛み・水ぶくれ・たこができる
・装具をつけても足首が内側に倒れる感覚が強く残る
脳卒中 内反足とは?|まず知っておきたいこと
内反足とは、足首が内側に倒れて、足の裏が体の内側を向いてしまう状態です。
多くの場合、つま先が下を向く「尖足(せんそく)」も同時に起こるため、医療の現場では「内反尖足(ないはんせんそく)」と呼ぶこともあります。
英語では equinovarus foot(イクワイノヴェイラス フット)と呼ばれます。
脳卒中のあとで起こる内反足は、脳のダメージによって筋肉のバランスがくずれることが原因です(Deltombe, 2017)。
どのくらいの人にみられるのか
2020年に公開された慢性期の脳卒中の方を対象とした分析では、歩きかたに異常がある方の最大18%に内反足のパターンがみられたと報告されています(Li, 2020)。
内反足は、脳卒中後の歩きにくさの主要な原因のひとつです。
「自分だけがつらい」と感じる必要はありません。
内反足が歩きにくさを引き起こす理由
歩くときの足は、かかとから接地して、つま先で蹴り出す動きを繰り返します。
内反足があると、かかとが床につく前につま先や足の外側が先に床に当たります。
すると、足首が安定しにくくなり、バランスをくずしやすくなったり、つま先が床に引っかかって転びやすくなったりします(Deltombe, 2017)。
また、足の外側に体重がかかりやすいため、長く歩くと小指側の皮膚が擦れて痛みやたこができることもあります。
脳卒中 内反足の主な原因|痙縮・筋力低下・拘縮
脳卒中後の内反足には、主に以下の3つの原因があります。
ひとつだけでなく、複数が重なっていることが多いです(Deltombe, 2017)。
| 原因 | わかりやすく言うと | 特徴 |
|---|---|---|
| 痙縮(けいしゅく) | 筋肉が異常に緊張する状態 | ふくらはぎや後脛骨筋がつっぱり、足首が内側に引っ張られる |
| 筋力低下 | 足首を上にあげる筋肉が働かない | 前脛骨筋や腓骨筋が働きにくく、つま先が下がりやすい |
| 拘縮(こうしゅく) | 関節が硬くなり動かなくなる状態 | アキレス腱や足首周囲がかたくなり、足首を上に向けられない |
痙縮(けいしゅく):筋肉の緊張が高くなる
痙縮は、脳卒中後の内反足のもっとも多い原因です。
足首を内側に引っ張る筋肉(ふくらはぎの筋肉や後脛骨筋)の緊張が高くなることで起こります。
2020年に公開された慢性期の脳卒中の方を対象とした分析では、歩行時の内反足のもっとも多いパターンが、ふくらはぎと後脛骨筋の同時の過剰な収縮であることが報告されています(Li, 2020)。
夜間や安静時には目立たなくても、歩きはじめると痙縮が強まり、内反が悪化することがよくあります。
筋力低下:足首を持ち上げる力が弱くなる
もうひとつの大きな原因が、足首を上にあげる筋肉(前脛骨筋)と、足を外側にむける筋肉(腓骨筋)の筋力低下です。
これらの筋肉が働かないと、歩くときに足首がだらりと下を向き、つま先が床に引っかかる「下垂足(かすいそく)」になります(Deltombe, 2017)。
内反足と下垂足は、別の症状ですが、同時に起こることが多いです。
拘縮(こうしゅく):関節が硬くなる
痙縮や筋力低下を放置すると、足首が動かない時間が長く続き、関節そのものが硬くなります。
この状態を拘縮といいます。
いったん拘縮が進むと、電気刺激や筋弛緩薬だけでは内反を戻せなくなることがあります(Deltombe, 2017)。
拘縮を防ぐためには、早い段階からの介入が大切です。
こんな症状・困りごとはありませんか?
以下に当てはまるものがないか、チェックしてみてください。
ひとつでも当てはまる場合は、内反足への対処が必要なサインです。
- 歩いていて麻痺側のつま先が床に引っかかる
- 足の小指側ばかりが擦れる、靴の外側がすり減る
- 装具をつけても歩きにくさが残る
- 長く歩くとふくらはぎがつっぱって痛い
- かかとから足を着くことができない
- 足首を自分で上に向けられない、または向きが弱い
- 歩くと不安定でバランスをくずしやすい
BRAINに来られる方でも、「歩きにくさは内反足が関係している」と知らずにいた方は少なくありません。
歩きにくさそのものを総合的に整理した記事として、ぶん回し歩行の原因と改善もあわせてご覧いただけます。
脳卒中 内反足の改善に向けてできること
内反足の対処には、原因に合わせた組み合わせが大切です。
ここでは、研究で効果が確認されている方法を中心にご紹介します。
短下肢装具(AFO):歩きやすさをすぐにサポートできる
短下肢装具(AFO)は、ふくらはぎから足にかけて装着する道具で、足首が下がるのを防ぎながら歩く動きを支えます。
内反足や下垂足への対処として、もっともよく使われ、効果が確認されている方法のひとつです。
2021年に公開された22の研究をまとめた分析では、短下肢装具を装着するとその場で歩く速さが改善すると報告されています(Choo, 2021)。
2022年に公開された日本のグループによる13の研究をまとめた分析では、短下肢装具を装着すると、歩くときに足首が下がりすぎる動きが減ることが示されています(Wada, 2022)。
装具にはさまざまな種類があり、内反の強さや筋力の状態に合わせて選ぶことが大切です。
電気刺激療法(FES):足首を上にあげる筋肉に直接働きかける
電気刺激療法は、歩くタイミングに合わせて麻痺した筋肉に電気を流し、収縮させる方法です。
足首を上にあげる前脛骨筋に電気を流すと、つま先が引っかからなくなります。
2025年に公開された電気刺激の効果を整理した分析では、下垂足を伴う脳卒中後の方で、歩く速さや足首の動きが改善したと報告されています(He, 2025)。
2018年に公開された電気刺激と短下肢装具を直接比較した分析では、両者の効果は同程度であることが示されています(Prenton, 2018)。
2020年に公開された分析では、電気刺激と短下肢装具のどちらも、歩く速さの改善に効果があると報告されています(Nascimento, 2020)。
2024年に公開された分析では、電気刺激の継続的な使用が、歩く能力やバランスの向上に役立つことが示されました(Chen, 2024)。
ボツリヌス療法(BoNT-A):筋肉のつっぱりをやわらげる注射
ボツリヌス療法は、つっぱっている筋肉に少量の薬を注射して、筋肉の緊張を一時的にやわらげる治療です。
痙縮が強い内反足に対して、医師が行う治療として広く使われています。
2025年に公開された下肢へのボツリヌス療法の効果を整理した分析では、脳卒中後の方の歩く速さが改善したと報告されています(De Santis, 2025)。
2016年に公開された下肢の痙縮へのボツリヌス療法の効果を整理した分析では、足首の動きや歩行機能の改善が示されています(Wu, 2016)。
2010年に公開された分析では、ボツリヌス療法を受けた方の歩く速さが、約0.044m/秒の改善を示したと報告されています(Foley, 2010)。
効果は3〜4か月で薄れるため、必要に応じて繰り返し受けることになります。
ボツリヌス療法は、リハビリと組み合わせて行うことで、より大きな効果が期待できます。
ストレッチと関節を動かす運動:拘縮を防ぐ基本
足首のストレッチや、ご自身・ご家族が他動的に動かす運動は、拘縮を防ぐ基本です。
1日に少しずつでも続けることが、長期的にみると大きな差につながります。
2006年に公開された慢性期の脳卒中の方を対象とした研究では、足首を繰り返し他動的に動かす運動を続けることで、足首の筋肉のつっぱりがやわらいだと報告されています(Wu, 2006)。
2024年に公開された装具などを用いた拘縮の管理に関する国際的な分析では、装具やストレッチを組み合わせることが、拘縮の予防や進行を抑えるうえで一般的なアプローチとして位置づけられています(Mohammed Meeran, 2024)。
ただし、ストレッチ単独では筋肉の緊張そのものが大きく変わるわけではありません。
装具・電気刺激・ボツリヌス療法と組み合わせて、はじめて十分な効果が得られます。
歩く練習そのものを増やす
道具や薬と並んで重要なのが、歩く練習そのものをしっかり積み重ねることです。
2020年に公開された入院中の脳卒中の方を対象とした研究では、高い強度で歩く練習を多く行ったグループのほうが、歩く速さや距離が改善したと報告されています(Moore, 2020)。
2017年に公開されたトレッドミルでの歩行練習に関する国際的な分析でも、補助の有無にかかわらず、歩く練習量を増やすことが歩行能力の改善につながると示されています(Mehrholz, 2017)。
2025年に公開された欧州脳卒中機構の運動リハビリに関する指針でも、繰り返しの多い課題指向型の練習が推奨されています(Alt Murphy, 2025)。
装具で内反を抑えながら、安全に歩く距離をのばしていく順番が現実的です。
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自分でできるセルフケア
専門的なリハビリと並行して、ご自宅でできるセルフケアも内反足の改善には欠かせません。
無理のない範囲で、毎日の習慣にしていきましょう。
ふくらはぎのストレッチ
ふくらはぎ(下腿三頭筋)は、内反尖足にもっとも関係する筋肉です。
- 椅子に座って、麻痺側の足を反対側の膝にのせる
- 手で足の指とかかとを持ち、つま先をゆっくり上に向ける
- ふくらはぎがじんわり伸びる位置で30秒キープ
- 1日2〜3回、無理のない範囲で続ける
痛みが強いときは無理をせず、可能な範囲で行ってください。
足首を上に向ける練習
足首を上にあげる筋肉(前脛骨筋)を働かせる練習です。
- 椅子に座って、麻痺側の足を床につける
- かかとは床につけたまま、つま先だけをゆっくり上に持ちあげる
- 2秒キープしてゆっくり戻す
- 10回×2セットを目安に、1日2回行う
自分で動かしにくいときは、反対側の手でつま先を支えて補助しても問題ありません。
靴のチェックポイント
靴の選びかたで、内反足のつらさは大きく変わります。
- かかとがしっかりしていて、足首まで包み込むタイプが安定しやすい
- つま先側がやや反りあがっている靴は、引っかかりにくい
- 装具を使う方は、装具ごと履けるサイズと幅を選ぶ
- 底が薄く、足裏の感覚が伝わるものはバランスを取りやすい
- 靴の外側がすり減ったら、早めに買いかえる
改善の見通し|歩く速さがどれくらい変わると生活が変わるのか
歩きにくさが改善したかどうかを、ご自身でも実感しやすい目安があります。
それが「歩く速さ」です。
2010年に公開された脳卒中後60日以内の方を対象とした研究では、歩く速さが秒速0.16m改善すると、家の中だけでなく地域でも歩ける可能性が高まると報告されています(Tilson, 2010)。
2014年に公開されたさまざまな疾患の歩く速さに関する分析では、秒速0.1〜0.2mの改善が、日常生活の変化として意味のある目安とされています(Bohannon, 2014)。
装具・電気刺激・ボツリヌス療法といった対処の積み重ねが、こうした「実感できる変化」につながります。
歩く速さが改善すると、杖を卒業できる可能性も見えてきます。詳しくは杖を卒業するタイミング|「いつまで必要?」の判断基準と練習メニューもあわせてご覧ください。
こんなときは病院での治療も検討を
リハビリと装具を続けても改善が頭打ちになる場合、医師による治療を検討する選択肢があります。
主な治療には、以下のものがあります。
- ボツリヌス療法(注射):痙縮が強い筋肉に注射する治療。3〜4か月効果が続く
- 選択的神経切離術(しんけいせつりじゅつ):痙縮を起こしている神経の一部を切る手術。長期的な効果がある
- 整形外科的な手術:かたくなった腱を伸ばしたり、関節を整える手術
2022年に公開された大人の内反尖足への手術に関する分析では、適切に行われた手術によって歩く能力が改善したと報告されています(Allart, 2022)。
2016年に公開された手術と早期リハビリを組み合わせた研究では、手術後早期から歩く練習を行うことで歩行能力の改善が示されています(Giannotti, 2016)。
2009年に公開された日本の脳卒中の方を対象とした研究では、装具を使うことで歩行中のバランスが改善することが示されています(Abe, 2009)。
手術は最後の選択肢ではなく、適切なタイミングで検討することで生活の質を大きく変えられる場合もあります。
家族・周囲ができるサポート
ご家族や周囲の方ができるサポートも、内反足の改善には大きな役割があります。
- 毎日のストレッチを一緒にやる時間を作る
- 歩く練習のときは、後ろや麻痺側に立って見守る
- 転倒しそうなときに支えられるよう、すぐ手が届く位置にいる
- 装具の装着・取り外しを手伝う
- 靴の外側のすり減り、皮膚の状態を一緒にチェックする
ご家族のサポートを長く続けるには、ご本人の気持ちのケアも大切です。詳しくはリハビリのモチベーションが続かない|本人と家族ができることもあわせてご覧ください。
相談窓口・地域の支援先
内反足の症状が続く場合や、装具・治療について相談したい場合は、以下に相談できます。
- かかりつけ医:まずは主治医に「歩きにくさが続いている」と伝えてください。リハビリ科や整形外科への紹介を検討してもらえます。
- リハビリテーション科のある病院:装具の見直し、ボツリヌス療法、手術といった治療について相談できます。
- 義肢装具士:装具の作製・調整・修理は義肢装具士が担当します。病院から紹介してもらえます。
- 地域包括支援センター:訪問リハビリやデイサービスの利用についてご相談いただけます。お住まいの市区町村の窓口にお問い合わせください。
- 脳卒中相談窓口(一部の認定病院に設置):退院後の生活、リハビリ、福祉サービスについて幅広く相談できます。
よくある質問(FAQ)
Q. 内反足は時間が経てば自然に治りますか?
自然に治ることは少なく、適切な対処をしないと進行することもあります。
2017年に公開された内反足の評価と治療に関する分析でも、早期からの介入が、長期的な歩行機能の維持に役立つと報告されています(Deltombe, 2017)。
歩きにくさを感じたら、早めに専門家にご相談ください。
Q. 装具はずっとつけていたほうがいいですか?
つけ続けるかどうかは、歩く目的と環境によって変わります。
外を歩く場面では、転倒予防と歩く距離をのばす目的で装具をつけたほうが安全です。
一方、自宅の中の短い距離で、十分にバランスが取れる場合は外して練習することも選択肢です。
判断に迷ったら、担当の理学療法士や義肢装具士にご相談ください。
Q. ボツリヌス療法は何回でも受けられますか?
原則として、3〜4か月ごとに繰り返し受けることができます。
同じ筋肉に何度も注射しても、効果が続く方は多くいます。
ただし、注射の直後にリハビリを集中的に行うことで、長期的な改善につながりやすいとされています(De Santis, 2025)。
Q. 発症から長く経っていても改善しますか?
発症から年数が経っていても、改善する可能性はあります。
装具の見直し、電気刺激、ボツリヌス療法といった対処を組み合わせることで、慢性期の方でも歩きやすさが変わったケースは多くあります。
慢性期のリハビリについては発症1年以降のリハビリ|維持期・生活期でも改善は続くのかもあわせてご覧ください。
Q. 内反足のリハビリはどこで受けられますか?
退院後は、外来リハビリ、訪問リハビリ、デイケア、自費リハビリといった選択肢があります。
装具の調整や歩行訓練の量を増やしたい方には、時間と内容を自由に設計できる自費リハビリを選ばれる方もいらっしゃいます。
BRAINでも、内反足や歩きにくさにお悩みの方の体験リハビリを承っています。
まとめ
- 脳卒中 内反足は、慢性期の歩行異常の最大18%にみられるありふれた症状
- 主な原因は痙縮・筋力低下・拘縮の3つで、複数が重なることが多い
- 短下肢装具(AFO)は、装着するとその場で歩く速さや足首の動きが改善する
- 電気刺激療法と装具は同程度の効果があり、原因や生活に合わせて選べる
- 痙縮が強い場合はボツリヌス療法、進行した場合は手術も選択肢
- ふくらはぎのストレッチ、足首を上に向ける練習は自宅で続けられる
- 歩く速さが秒速0.16m改善すると、地域でも歩ける可能性が高まる
次にやるべきこと:まずはご自身の内反足の原因を整理してみてください。痙縮・筋力低下・拘縮のどれが主かによって、対処の組み立てが変わります。判断に迷ったら、担当の理学療法士か医師にご相談ください。
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参考文献
- Li S. Ankle and Foot Spasticity Patterns in Chronic Stroke Survivors with Abnormal Gait. Toxins. 2020;12(10):646. PMID: 33036356
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- Allart E, et al. Neuro-Orthopedic Surgery for Equinovarus Foot Deformity in Adults: A Narrative Review. J Foot Ankle Surg. 2022;61(3):648-656. PMID: 34953669
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- Abe H, et al. Improving gait stability in stroke hemiplegic patients with a plastic ankle-foot orthosis. Tohoku J Exp Med. 2009;218(3):193-9. PMID: 19561389
最終更新:2026年5月

