脳卒中後の栄養の管理は、麻痺の回復と日常生活の自立に直結する大切な課題です

食欲がない、飲み込みにくい、退院後に体重が減ってきた――。

そんな悩みを抱えるご本人やご家族はとても多いです。

脳卒中のあとに食事と栄養が不足すると、筋肉が落ちてリハビリの効果が出にくくなりますHuppertz, 2021)。

この記事では、脳卒中後に筋肉を落とさないための食事のポイントと推奨摂取量を、脳卒中専門リハビリ施設BRAINの代表で理学療法士の針谷が、臨床経験と研究論文に基づいて解説します。

情報の信頼性について
・本記事はBRAIN代表/理学療法士の針谷が執筆しています(執筆者情報は記事最下部)。
・本記事の情報は、信頼性の高い研究論文から得られたデータを中心に引用しています。

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⚠ 今すぐ医療機関への相談を検討してください
以下の症状が突然出た場合は、様子を見ずに救急要請(119番)を検討してください。
・顔のゆがみ(片側が下がる)
・片腕の脱力(腕が上がらない)
・言葉のもつれ(ろれつが回らない)

また、栄養に関して以下の症状がある場合は、早めにかかりつけ医・管理栄養士にご相談ください。
・食事のときにむせる、咳き込むことが続いている
・1か月で体重が2〜3kg以上減ってきた
・食事量が以前の半分以下になっている
・微熱が続き、痰が増えている(誤嚥性肺炎の可能性)

脳卒中 栄養管理がなぜ大切なのか

脳卒中のあとは、麻痺・嚥下障害・食欲低下などが重なって食事量が減りやすくなります。

食べる量が減ると、体に必要なエネルギーやタンパク質が不足します。

その結果、筋肉量が減りリハビリの成果が出にくくなる悪循環に陥ります

脳卒中後はどのくらいの方が低栄養になるのか

2021年に公開された複数の研究をまとめた分析によると、脳卒中の急性期で低栄養が見られる方は3.8〜34.0%と報告されています(Huppertz, 2021)。

さらに、リハビリの段階(回復期)では低栄養の方の割合が増える傾向が示されています。

慢性期になると、低栄養の頻度はさらに高まることが報告されています

つまり、脳卒中後の栄養問題は急性期だけのものではなく、退院してから何か月も続くということです。

サルコペニア(筋肉減少)も脳卒中後に多い

サルコペニアとは、加齢や病気によって筋肉量と筋力が減ってしまった状態のことです。

2020年に公開された複数の研究をまとめた分析では、脳卒中を経験した方の約42%にサルコペニアが見られると報告されています(Su, 2020)。

2024年に公開された新しい分析でも、脳卒中後のサルコペニアの頻度は43.9%と高い水準が示されています(He, 2024)。

2人に1人近くが筋肉減少の状態にあるということです。

さらに、もともとサルコペニアがあった方は、脳卒中後の機能回復が悪く、生命予後にも影響することが報告されています(Li, 2023)。

BRAINの判断!
BRAINでも、退院後にご家族から「最近やせてきた」「ズボンがゆるくなった」とご相談を受けることが多いです。麻痺側の腕や脚は、麻痺がない側に比べて使う頻度が減るため、筋肉が落ちやすくなります。栄養面のサポートとリハビリは必ずセットで考える必要があります。

こんなお悩みはありませんか?

以下に当てはまる項目がないか、チェックしてみてください。

ひとつでも当てはまる場合は、栄養面のサポートが必要なサインです

  • 退院後、ズボンやベルトがゆるくなってきた
  • 食事のときにむせる、咳き込むことが増えた
  • 1日3食食べきれず、残してしまうことが多い
  • 食欲がなく、食事の準備が面倒に感じる
  • 食事の好みが変わり、肉や魚を食べる量が減った
  • 退院後、握力が弱くなったように感じる
  • 少し動くだけで疲れるようになった

BRAINでも、これらの項目に当てはまる方は珍しくありません。

脳卒中後の疲れやすさは、低栄養や筋肉減少が原因で起こることもあります。

詳しくは脳卒中の疲労|疲れやすさの原因と対処法で解説しています。

脳卒中後の食事と栄養|筋肉を落とさないための4つの基本

ここからは、脳卒中後に筋肉を落とさないための食事の基本を4つに絞って解説します。

難しい栄養計算ではなく、毎日の食卓で実践できる視点をお伝えします。

基本①:タンパク質を毎食しっかり摂る

筋肉の材料はタンパク質です。

脳卒中後にリハビリを行う方では、健康な高齢者よりも多めのタンパク質が必要とされています。

2024年に公開された日本の研究では、体重1kgあたり1日1.2g以上のタンパク質を摂っていた方は、リハビリ中に大腿(太もも)の筋肉が維持されやすかったと報告されています(Tanaka, 2024)。

体重60kgの方であれば、1日72g以上のタンパク質が目安です。

これを3食に分けると、1食あたり20〜25g程度になります。

食品(1食あたりの目安量)タンパク質量の目安
鶏むね肉(80g)約18g
鮭の切り身(80g)約18g
卵(1個)約6g
納豆(1パック40g)約7g
木綿豆腐(150g、半丁)約10g
牛乳(200ml)約7g
ヨーグルト(100g)約4g

例えば朝食で「ご飯+納豆+卵+牛乳」だと、約20gのタンパク質が摂れます。

朝食を菓子パンとコーヒーだけで済ませる方が多いですが、その内容ではタンパク質はほとんど摂れません。

とくに朝食でタンパク質を意識的に摂ることが、筋肉維持のカギになります

BRAINの判断!
BRAINでも、ご利用者ご家族には「3食すべてに、手のひらサイズのタンパク質食品を入れる」とお伝えしています。難しい計算をしなくても、肉・魚・卵・大豆製品・乳製品のいずれかを必ず1品入れることで、目安量に近づきます。

基本②:エネルギー(カロリー)を不足させない

タンパク質だけ気にしてもエネルギー全体が足りないと、せっかくのタンパク質が筋肉ではなく身体を動かす燃料として使われてしまいます。

そのため、ご飯・パン・麺などの主食もしっかり摂ることが大切です。

1日の目安は、体重1kgあたり25〜30kcal以上です

体重60kgの方であれば、1500〜1800kcalが目安になります。

体重が徐々に減ってきている方は、これでも足りていない可能性が高いです。

1か月で2〜3kg以上の体重減少がある方は、早めに管理栄養士や主治医に相談してください

基本③:「ロイシン」を含むタンパク質を選ぶ

ロイシンは、必須アミノ酸の一種で、筋肉を作るスイッチを入れる働きがあります。

2024年に公開された日本の研究データでは、ロイシンを多く含む必須アミノ酸の補助食品を加えた群で、脳卒中後リハビリ中の筋力と歩行が改善したことが報告されています(Nakagawa, 2024)。

ロイシンが多く含まれる食品は、肉(とくに鶏むね肉・牛もも肉)、魚(マグロ・カツオ)、卵、乳製品、大豆製品などです。

つまり、普段から動物性・植物性のタンパク質をバランスよく食べていれば、自然にロイシンも摂れます。

食欲が落ちてしまった方は、病院や薬局で扱っている栄養補助食品(医療用ゼリー・ドリンクタイプ)も選択肢になります

BRAINの判断!
BRAINでも、リハビリ前後にロイシン入りの栄養補助食品を活用されている方がいらっしゃいます。食事だけでタンパク質が足りない日に、間食として活用するのが現実的です。市販の高タンパクヨーグルトや牛乳をプラスするだけでも違いが出ます。

基本④:運動と栄養はセットで考える

食事だけ整えても、筋肉に刺激が入らないと筋肉量は増えません。

逆に、運動だけしても材料が不足していれば筋肉は増えません。

2024年に公開された国際的な分析(Cochrane)では、栄養介入と運動を組み合わせたほうが、栄養介入だけよりも生活動作の改善につながる傾向が示されています(Sakai, 2024)。

退院後にご自宅で過ごす時間が増えると、活動量が一気に減りがちです。

退院後の生活全般のポイントは退院後の脳卒中リハビリ完全ガイドでも詳しく解説しています。

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嚥下(えんげ)障害がある場合の食事の工夫

脳卒中のあとには、飲み込みが難しくなる「嚥下障害」が起こることがあります。

食事のときにむせる、食べ物がのどに残る感じがある場合は、嚥下障害の可能性があります。

飲み込みにくさを我慢して食べ続けると、誤嚥性肺炎のリスクが高まります

食事の形態を調整する

むせやすい場合は、食材の固さや水分の状態を調整します。

  • パサつく食材(食パン・焼き魚など)はマヨネーズやあんかけでしっとりさせる
  • 水・お茶などのサラサラ液体は、市販のとろみ剤で適度なとろみをつける
  • 大きい食材は一口大に切る、または刻んで食べやすくする
  • 口の中でまとまりにくいもの(きざみ食のレタスなど)はあんでまとめる

市販のレトルト介護食(ユニバーサルデザインフードなど)も活用できます。

食べる姿勢と環境を整える

姿勢も誤嚥を防ぐ大切なポイントです。

  • 椅子に深く座り、背筋を伸ばす(ベッド上でも上半身は90度近くまで起こす)
  • あごをやや引く(上を向きながら飲み込まない)
  • テレビを消し、食べることに集中する
  • 食後30分は横にならない(逆流を防ぐ)

嚥下障害がある方は、必ず医師・言語聴覚士・管理栄養士のサポートを受けながら食事を進めてください。

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BRAINでは、「むせる頻度が増えてきた」というご相談を受けたら、まず食事の形態と姿勢を見直していただくようお伝えしています。同時に、嚥下のリハビリができる病院・診療所をご紹介することもあります。低栄養と誤嚥は背中合わせの問題なので、両方を同時に整えることが大切です。

再発予防の視点|どんな食生活を意識すればいいか

ここまで、筋肉を落とさない食事のポイントをご紹介しました。

ただし、脳卒中の場合は再発予防の観点も忘れてはいけません。

2019年に公開された総説では、野菜・果物・魚・全粒穀物・オリーブオイルを中心とした食生活(地中海式)が、心血管病の発症リスクを低減すると報告されています(Martínez-González, 2019)。

具体的には、以下のような食生活が再発予防に役立つとされています。

  • 野菜・果物を毎日両手いっぱい(350g以上)摂る
  • 魚を週2回以上(とくにサバ・イワシ・サンマなどの青魚)
  • 白米よりも雑穀米・玄米・全粒粉パンを取り入れる
  • 食塩は1日6g未満を目安に減らす
  • 動物性脂肪より植物油(オリーブ油など)を選ぶ

食事だけでなく、運動・服薬を含めた再発予防の総合的な内容は脳卒中の再発予防(食事・運動・薬)で詳しく解説しています。

「筋肉を落とさない食事」と「再発予防の食事」は、どちらも大切で、両立できます

例えば、青魚や大豆製品はタンパク質が多く、再発予防にもつながります。

ご家族ができるサポート

ご本人だけで食事と栄養を整えるのは、想像以上に大変です。

とくに利き手に麻痺がある場合や、料理の準備が難しくなった場合は、ご家族の協力が大きな支えになります。

ご家族が意識したいポイントを4つにまとめました。

  1. 定期的な体重測定:週1回、同じ時間帯に体重を測って記録する
  2. 食事量の見守り:毎食どのくらい食べたか、ざっくり把握しておく
  3. 残しがちな食品を確認:いつも同じ食材が残るなら、形態を変える検討
  4. 主治医・管理栄養士への共有:体重減少・むせ・食欲低下があれば早めに相談

体重の変化は、栄養状態が悪化していることを示す最初のサインです

「最近、痩せたかな?」と気づいたらそのままにせず、医療職に相談してください。

よくあるご質問(FAQ)

Q1. プロテインは飲んでもいいですか?

普通の食事でタンパク質が足りないときの補助として、プロテインを使うのは選択肢です。

ただし、腎臓の機能が低下している方は、タンパク質の制限が必要なことがあります。

必ず主治医または管理栄養士に相談してから始めてください

Q2. 食欲がないときはどうしたらいいですか?

食欲がないときは、無理に「3食しっかり」を目指さなくても大丈夫です。

1回量を減らして食事の回数を増やす(1日5〜6回の少量頻回)、栄養補助ドリンクで補うなどの方法があります。

大切なのは1日のトータルでエネルギーとタンパク質を確保することです

Q3. 塩分を減らすと味が物足りなくなります

食塩を減らしても風味が広がる工夫がいくつかあります。

レモン・お酢・カボス、しょうが・にんにく、わさび・からし、かつお節・昆布などのうまみ食材を活用してください。

市販の減塩しょうゆ・減塩みそも便利です。

Q4. 経管栄養(チューブ)になっています。リハビリは続けられますか?

経管栄養でも、必要なエネルギーとタンパク質を確保できればリハビリは続けられます。

口から食べる訓練が再開できる方も多くいらっしゃいます。

主治医・言語聴覚士・管理栄養士と連携しながら、段階的に進めていきます。

Q5. 糖尿病があります。何を優先すべきですか?

糖尿病がある方の食事は、エネルギー量・糖質量・タンパク質量のバランスが重要です。

自己流で「タンパク質を増やすために主食を減らす」と、低血糖などのリスクが出ます。

必ず主治医・管理栄養士による個別の食事指導を受けてから調整してください

まとめ|脳卒中後の栄養管理は「筋肉を守る」視点が大切

この記事のポイントを整理します。

  • 脳卒中後のサルコペニア(筋肉減少)は約42〜44%に見られる
  • 体重1kgあたり1日1.2g以上のタンパク質を目標にする
  • 朝食でのタンパク質確保が筋肉維持の鍵
  • ロイシンを含む肉・魚・卵・大豆・乳製品をバランスよく
  • 運動と栄養はセットで考える
  • 嚥下障害がある場合は形態調整・姿勢調整を組み合わせる
  • 再発予防の観点では、野菜・魚・全粒穀物・減塩を意識
  • 体重の変化は栄養状態の最も重要なサイン

食事と栄養は、毎日のリハビリの土台になる大切な要素です

BRAINでは、リハビリと栄養の両面から、回復をサポートしています。

ご本人・ご家族でできる範囲を一緒に考えながら、無理のない計画をお作りします。

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参考文献

  1. Huppertz V, Guida S, Holdoway A, et al. Impaired Nutritional Condition After Stroke From the Hyperacute to the Chronic Phase: A Systematic Review and Meta-Analysis. Front Neurol. 2021. PMID: 35178021
  2. Su Y, Yuki M, Otsuki M. Prevalence of stroke-related sarcopenia: A systematic review and meta-analysis. J Stroke Cerebrovasc Dis. 2020;29(9):105092. PMID: 32807486
  3. He X, Shen X, Guo Z, et al. Prevalence and risk factors of sarcopenia in patients with stroke: a systematic review and meta-analysis. Neurosurg Rev. 2024;47(1):964. PMID: 39729202
  4. Li Y, Hong M, Shi H. Premorbid sarcopenia and functional outcome after acute stroke: a meta-analysis. Asia Pac J Clin Nutr. 2023;32(3):330-338. PMID: 37789653
  5. Tanaka S, Suzuki M, Kaminaga T, et al. Association between adequate protein intake and quadriceps quantity and quality during rehabilitation in people with subacute stroke. Brain Impair. 2024;25:IB24074. PMID: 39625820
  6. Nakagawa N, Koyama S, Saitoh E, et al. Effects of Nutritional Support with a Leucine-Enriched Essential Amino Acid Supplement on Body Composition, Muscle Strength, and Physical Function in Stroke Patients Undergoing Rehabilitation. Nutrients. 2024;16(24):4280. PMID: 39770886
  7. Sakai K, Niimi M, Momosaki R, et al. Nutritional therapy for reducing disability and improving activities of daily living in people after stroke. Cochrane Database Syst Rev. 2024;8(8):CD014852. PMID: 39145517
  8. Martínez-González MA, Gea A, Ruiz-Canela M. The Mediterranean Diet and Cardiovascular Health. Circ Res. 2019;124(5):779-798. PMID: 30817261

最終医療レビュー日:2026年4月27日

本記事は一般的な情報提供であり、個別の医学的判断を代替するものではありません。具体的な栄養計画は、必ず主治医・管理栄養士・言語聴覚士などにご相談ください。